工場関係

リキッドフリーザー

リキッドフリーザー(アルコール凍結)

1.凍結のメカニズム
冷凍で保存する場合、凍結によって生じる氷が食品にどのような影響を与えるかが問題です。
食肉、魚介では、その7~8割、青果では8~9割以上を水分が占めます。食品を冷却していくと、この水分が個体である氷に変化していきます。
水が氷になると体積が膨張します。食品の細胞中に、大きな氷の結晶が出来ると細胞は破壊され、そのまま凍結されてしまいます。
解凍すると、壊れた細胞から出た水分がドリップとして流れ出し、水分を失うと共に保水性は低下し、旨味成分も半減されてパサパサした食感になります。氷の結晶が小さければこのダメージは小さくなります。
水が氷の結晶に変わる温度は、氷結点と呼ばれます。氷結点は、純粋な水であれば0℃ですが、何かの溶液の場合は濃度が高いほど氷結点が低くなります。
食品中の水分にはアミノ酸、ミネラルなどが溶け込んでいて、食品の氷結点は食品ごとに異なりますが、ほぼ-1℃~-5℃の範囲となっています。

氷結点が生成する温度帯は「最大氷結晶生成帯」と呼ばれ、この温度帯を長い時間をかけて通過するほど、氷結晶は大きくなります。このような暖慢凍結よりも、最大氷結晶生成帯を短時間で通過させて、氷の結晶を小さく留める急速冷凍の方が、冷凍した食品としての品質は良好といえます。


凍結速度がどの程度の時が急速冷凍で、どこからが暖慢冷凍であるかというはっきりしとした定義はありませんが、一般的には最大氷結晶生成温度帯を何分で通過したかが目安となり、その時間が約30分以内の場合の場合を急速冷凍といっております。
ここで目安となるの、最大氷結晶生成温度帯とは、食品を冷却していく過程において、食品の温度が下がってきてマイナス温度になると凍結が始まります。物によってその温度帯は若干異なりますが、普通-1℃~-5℃の範囲にあります。凍結が始まると周囲からの熱は凍結潜熱、すなわち液体である水から個体である氷への状態変化のため消費されるので、食品自体の温度は他の温度帯と異なり、下がりかたが非常に遅くなります。
この-1℃から-5℃の温度帯の事を最大氷結晶生成温度帯といい、食品中の水分のほぼ80%が氷結晶に変わるところです。このため凍結速度は最大氷結晶生成温度帯の通過時間により大きく左右されます。
そして温度帯は次のように、冷凍食品の品質に影響をもっている点で重要です。

1)氷結晶の状態(大きさ、数、形状、位置)いかんによって、肉質や組織構造がうける損傷の度合いが異なります。すなわち冷凍速度が速いほど、小形で針状の氷結晶が細胞内に多数発生し、組織を破壊する機会が少なく、その反対に凍結速度が遅いと、大形で柱塊状の氷結晶が発生し、組織を破壊する機会が増します。

2)低温性の微生物の中には、この温度帯ではまだ発育できるものがある為、この温度帯を含めて出来るだけ早くマイナス12℃以下にすることが必要です。

2.アルコール凍結
「液体で凍らせる」という手法
これまで冷凍の常識であった、「冷気(エアーブラスト)にさらす凍結」ではなく、「冷たい液体(リキッド)に浸す」冷凍方法を用いる。マイナス30℃の液体に浸すことでエアー凍結の20倍の速度で凍結を実現します。

液体で凍結すると
1.気体より熱伝導率の早い液体を介して冷凍する為、凍結速度が速い。
2.細胞を傷つけないのでドリップが出ない。
エアーブラストでの凍結では、水分が約100~200ミクロンの氷の結晶となります。
アルコール凍結では、氷の結晶は5ミクロンと極小であり、肉の細胞破壊を防ぐことができ、解凍後も生のままと変わらない瑞々しさを維持します。
3.完全な凍結を行える分、長期保存が可能
大手ハム主要メーカー数社では、テンパリングに使用しています。
また、水産会社ではマグロを凍結する為に海外に設置しているところもあります。その他有名しゃぶしゃぶチェーン店では肉の凍結で使用したり、懐石料理で調理済みの懐石を凍結したりします。
このように、冷凍状態での品質保持に絶対の確信がある為に、アルコール凍結は幅広く使用されております。

3.より低温で凍結するとどうなるか
リキッドフリーザー(アルコール凍結機)のアルコール温度はマイナス30度、では窒素凍結のマイナス196℃のようにより低温で凍結した方が鮮度の保持には適しているのではなか?と考えることもできます。確かに-20℃ほどの冷凍庫よりも、-30度の冷凍庫の方が品質の高い凍結を可能にします。
しかし、高品質な凍結に必要なのは実は温度ではなく、氷の出来る温度帯(最大氷結晶生成帯)を通過させるスピードなのです。
液体の熱伝導のスピードは気体の20倍。エアー凍結でいかに温度を下げてもリキッドフリーザーのスピードには追いつきません。では、より低温のリキッドフリーザーではどうでしょう?実はこれも答えはNOです。
急激に冷やし過ぎても細胞がびっくりして肉や魚が割れてしまいます。例えば、工事現場で、ビルを建設する際に、鉄骨の基礎にコンクリートを流し込みます。このコンクリートも固まる際の温度が重要です。気温の高い場所で建設する際には、コンクリートを冷やす作業があります。そうしないとコンクリートが急激に固まり、建設された建物にはヒビが入ってしまう為、強度が下がります。
食材は建物ではありませんので、強度は問われませんが、急激に凍結するとそれ自体にヒビ割れが生じてしまします。最高の凍結にはスピードと温度、絶妙なバランスが大事になります。

提携工場のリキッドフリーザーの画像です。





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